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「癒しによりあなたの背から烙印は消えました。今日よりあなたは人々から神と崇められる。誓いの通り、人々のためにその命を使うのです。畏れることはありません。これは尊い行為なのですから」
日々、国から罪人が排出される。
罪人は救いを求めて国へと戻ろうとする。
人々は癒し手に救いを求め続ける。
「神がどれだけ救いをお与えになっても、この世から汚れは消えない。癒し手がいなくなることはなく、世は廻り続けている。ならば癒し手が生まれなくなったときこそ、真に世界が浄化されたことになるのでしょう」
神官の言葉を聞く男の意識は薄れかけていた。まるで己の汚れた意識さえもが浄化されるかのように、白く染まっていく。
「それでは新たな癒し手様、どれほどの間になるかわかりませぬが、どうぞよろしくお願い致します」
神官は深々と礼をする。その姿はもはや敬虔な信者であり、罪人に対するものではあり得なかった。
白亜の神殿には、今日も救いを求めて人々が訪れている。
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