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終末の時を待つ僕ら
吐く息が白く凍って、すぐに大気に溶けて見えなくなる。僕はそんな冷たい空気の中で、地平線に夕日が沈んでいくのを、静かに眺めていた。これから長い夜が始まる。
夕日はあっという間に見えなくなって、うっすらと残る茜色も、迫る群青に押しのけられていく。
その様子を、ただじっと眺めていた。やがて空の殆どが群青に染まろうかという時、遠くから近付いてくる足音が聞こえてきた。
その足元の主が誰なのかわかっていたから、僕は振り向かずに空を見ていた。今日は月のない夜だ。星の煌めきが強く見える。
足元は真っ直ぐに僕の方に近付いてきて、やがて止まった。
「シオン」
シンとした世界に、その声は静かに響いた。
振り向くと、少し離れた場所にテオが立っていた。
「そろそろ帰ろう」
「そうだね。もう日も暮れてしまったし」
そう言いながら立ち上がると、テオは僕の隣に並んで立ち、まだほんの少し明るさを残した地平線を眺めた。
「……夜になるのが早くなったな」
「……うん。寒いから早く戻ろう」
今度は僕が先に振り返り、歩き出した。少し遅れてテオが付いてくる。
二十分ほど歩くと、遠くに明かりが見えた。
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