終末の時を待つ僕ら

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 僕が生まれた村には、一つの言い伝えがあった。  遥か昔、村に予言師の一族が居た頃、その最後の一人が予言したと言われる、世界の終末についての言い伝えだ。  『遠い未来、この村で一日に三人の子供が生まれる。その子供たちが十八になる年の春、少しずつ夜が世界を蝕み始め、人々は三人の子供たちを残して、皆目覚めのない深い眠りに誘われる。やがて夜が完全に世界を支配し、終わらない冬と共に、三人の子供たちも世界と共に眠るだろう』  予言師の血が絶えた後も、この予言は言い伝えとして村に残り続けた。  そして十八年前の春、僕らは生まれた。  テオとミアは男女の双子だ。僕らは隣同士の家に生まれ、幼い頃から一緒に過ごしてきた。  言い伝えの通りに生まれてきた僕たち三人は、何の問題もなく、穏やかに、十八歳までの時を過ごした。言い伝えは古く、もしかしたら世界の終末など訪れないかもしれないと、人々は心のどこかで思っていた。  ところが、僕らが十八歳になる年の春、村では奇妙な病気が流行り出した。  始まりは僕の母親だった。  ある朝、いつもは朝一番に起きて動き出すはずの母が起きてこなかった。     
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