サンタクロースをあきらめた夜

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「じゃあな、ちゃんとねてろよ」 「やだ! おにいちゃん、まって!!」 「ゆう、おっきな声出したらだめだろ、おとなりさんにおこられるぞ。いいからねてろ」  ゆうはどこに行くんでもおれの後をついてきたがった。おれたち2年生とは、体の大きさもできることもちがうっていうのに、クラスの友達よりもおれにかまってほしがるんだ。ゆうがいると思ったようにあそべなくてこまるのに。  今日だってそうだ。ゆうをつれていったら、カブキチョーにつくのがおそくなる。仕事だって「子どもをつれている人はおことわりです」って言われて、やらせてもらえないかも。だからやっぱりゆうにはるすばんをしてもらわなきゃ。  バイバイ、と手をふってドアをあける。アパートのろうかに出ると外はへんに明るかった。ゆきがふってるからだ! 「おおっ」  目の前の道に少しつもってたゆきを手ですくって、おにぎりを作るようににぎりかためる。  ゆきがっせんならクラスで負けなしだから、カブキチョーにゆきがっせんの仕事もあるといいな。たくさんの大人にかって、いっぱいお金をもらうんだ。そうしたらお母さんはよろこぶし、ゆうにプレゼントを買ってやれる。サンタクロースになんかたよらずにすむ。 「おにいちゃん! おにいちゃんっ!! いっちゃやぁだぁあああ~っ」  ウチのドアがあいて、ゆうが泣きじゃくりながら出てくる。ああそうだ、カギをかけわすれてた!   ゆきだまを放ってゆうをへやの中に押しもどす。パジャマでこんなさむいところに出てきたらかぜをひいちゃう。早くふとんであっためてやらないと。  ほんとはストーブをつけたいけど、だめだ。お母さんがいないときはさわっちゃいけないってやくそくだから。 「ひぐっ、お、にいぢゃん」 「どうした?」 「い、がな、いで…ざんだざん、ごなぐ、なっぢゃう…!」  ゆうはぎゅっとおれにしがみついて、はなれようとしなかった。むりにるすばんさせようとしても、またおいかけてきちゃうだろう。さっきみたいに、わんわん泣きながら。  もう今日はあきらめるしかない。カブキチョーで仕事をするのは明日にしよう。クリスマスがおわったら、ゆうもサンタクロースのことを気にしなくなるだろうから。   「わかったよ…もう行かないって」 「ほん、とに…?」 「ほんとのほんと。ウソついたらハリ千本のーます!」
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