サンタクロースをあきらめた夜

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 ゆびきりげんまんしてやったら、ゆうはぱっとわらってふとんに入っていった。ゆうに早く早く、とせかされて、リュックも上着もぬげないままふとんにひっぱりこまれる。あったかくて気持ちいいけど、このままじゃねにくい。 「おにいちゃん、おやすみなさい。サンタさんたのしみだね」 「あんまりきたいしたらだめだぞ、ゆう。もしかしたら今年はおやつももらえないかもしれないんだから」  はーい、とも、そうなの? とも、ゆうはこたえなかった。今のいっしゅんの内に、おれの手をにぎったままねむっちゃったからだ。  今からでもカブキチョーに行けないかと思ったけど、やっぱりやめた。ハリ千本のみたくないし、もしおれのせいでゆうにサンタクロースがこない、なんてことになったらこまるから。  いや、いいんだ、こないならこなくたっていい。そうしたらそのときはおれが仕事でお金をもらって、ゆうのほしかったものを買ってきてやれば。 「それなら、今のうちにゆうが何をおねがいしたのか見ておかなきゃ」  自由なほうの手を、ゆうのまくらの下にそっと入れる。サンタクロースへの手紙をここにかくしていることなんておみとおしだ。  ただ、ひっぱりだしたはいいけど、くらくてよめない。リュックサックからどうにか取り出したかいちゅうでんとうをつける。 「うーん…」  ひかりがまぶしかったのか、ゆうはおれの手をはなしてねがえりを打った。ヒヤッとしたけど、これでリュックサックと上着をぬげるし、安心して手紙もよめる。  サンタさんへ。おぼえたてのカタカナも使って、ゆうはこんなことを書いていた。 「ゆうはプレゼントはいりません。だからおにいちゃんにふたつプレゼントをあげてほしいです。おにいちゃんはいつもいいこにしています。ゆうにやさしくしてくれます。でもこのまえのクリスマスはプレゼントがこなくてかなしそうでした。おにいちゃんにおこられてママもかなしそうでした。おにいちゃんとママがかなしそうだとゆうはいやです。だからおねがいです。おにいちゃんにプレゼントをあげてください」  1回よんだだけじゃ、いみがわからなかった。もう1回はじめにもどる。  ゆうはプレゼントはいりません。だからおにいちゃんにふたつプレゼントをあげてほしいです。
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