サンタクロースをあきらめた夜

6/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 何回よみかえしても、ゆうがほしい物の名前が出てこない。おれのことばっかりだ。なんだこれ。どうして? あんなに「サンタさんがこなくなっちゃう」って言ってたのに。これじゃあ、サンタクロースがきてもこなくても、ゆうは何もプレゼントをもらえない!  ゆうのやつ、プリキュアのヘンシングッズはいいのか? 友達がもってるシールてちょうだって、あんなにほしい、ほしいってよく言ってるのに。それから、いっしょにかいものに行ったときにいつもじっと見てる、レジ前のぬりえ本も!  プレゼントはいらないなんてうそだ。うそをついたらどろぼうのはじまりで、本当にわるい子になっちゃう。ちがうのに。ゆうは、おれをよろこばせようとしてくれただけなのに。 「兄ちゃん、プレゼント2こもいらないよ、ゆう…ちゃんと自分がほしいものをおねがいしろよ…!」  ゆうがいっしょうけんめい書いた手紙の上に、なみだがぼろぼろおちた。ティッシュでふいて、もとどおり、まくらの下にかえす。  そのかわりに、自分が書いたサンタクロースへの手紙を、おれのまくらの下から取り出した。 「サンタクロースへ。どうせおねがいしてもプレゼントなんてくれないだろうけど、母さんが書けって言うから書きます。もしプレゼントをくれるなら、夜にお母さんが出ていかなくてもすむだけのお金がほしいです。お母さんがいっしょに夜ごはんを食べて、夜いっしょにねられるようにしてください。お母さんがかえってこないんじゃないかっていつもふあんだしさびしいです」  ゆうのことなんて少しも書いていない手紙をビリビリにやぶく。さむいはずなのにあせが出た。はずかしい。  おれはお兄ちゃんなのに、妹のことをちっとも考えなかったわるい子だ。そしてゆうは、そんなお兄ちゃんのためにうそつきになったわるい子だ。これじゃやっぱり、サンタクロースなんてくるはずない。 「サンタさん、ごめんなさい…! おれが、ゆうにこんな手紙を書かせました。ゆうがうそをついたのはおれのせいです。わるい子なんかじゃありません。どうかおねがいです…ゆうは、ほんとうはほしいものがあるはずなんです。おれにはプレゼントくれなくていいから、ゆうにはプレゼントをあげてください」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!