OTTAVA(オッターヴァ)のくれたメロディー

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「♪んーふふっふー・・・」 窓の外は6月の長雨だ。 それを見て『雨に唄えば』の鼻歌がもれる。 これを凡庸と言わずして何と言おうか。 「あーーーー!!  コンテストのしめきりまであと5日だ!  どーすんだオレ!?」 白紙の五線譜に頭をうずめ、かきむしったヘアースタイルだけはベートーベンの「オレ」滝沢恋太(レンタ)は、作曲家への階段の1段目で早くも立ち止まる19歳だ。 音楽好きが高じて高校時代をバンド活動に費やし、上京してビッグになって帰ってくると宣言したところが音楽家としてのピークだったのか!? いや、オレの才能を認めさせるのにあと5日もあれば十分! ・・・なワケないよな。 机に座りうなだれた顔の下の五線譜でおたまじゃくしがオレをあざ笑っているようだ。 「ん??」 五線譜は白紙だったハズだ。 顔を上げて目をこすり、ふたたび確認した。 「おたまじゃくし・・・?」 紙面に立体感のない四分音符がひとつ。印刷されているようにも見える。 しかし、そおーーっと指を近づけると、ひらひらと尾をゆらして逃げていくその姿はおたまじゃくしそのものであった。 しばらく観察すると、おたまは五線譜の左上、1小節目へと泳いで行く。 止まった場所は「ド」だ。 なおも静観を続けると、少し右上に移動して止まった。「レ」だ。 次は「ミ」、その次は「ファ」、 そして右下へ向きを変え「ミ」「レ」「ド」。 そう、(かーえーるーのーうーたーがー)である。 「コイツ、音楽がわかるのか!!!?」 ためしに歌ってみると、おたまはピチピチと喜びを身体で表現した後、1小節目へ戻って繰り返した。 「か、、、、かわいい・・・」
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