番(つがい)

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「う…… ぐ…… っ」 津田が低くうなる。突き出た肩甲骨の間に、脂汗が浮いている。ギリ、と、食いしばった歯の軋む音がした。 額を床に押し付けるようにして痛みに耐える津田の横顔は、発情期だというのに紙のように白い。 恐る恐る名前を呼ぶと、津田は涙目を細めて、薄く微笑んだ。 どうして笑ってくれるんだろう、こんな状況で。 酷い痛みに、全身を震わせながら…… 津田の優しさに胸が痛み、乾はただ、謝ることしかできなかった。 「みんな、こうなんだろ?」 苦しい息の下からそう問われ、言葉を失う。 津田の首に押し当てたのは、綿のシャツだ。その白い生地が、みるみる赤く染まっていく。 血が止まらない。 乾には、この出血が普通じゃないことは分かっていた。 妻の時は。彼女の白いうなじに自分の歯型がはっきり見えた。血は滲んでいた。それでも、流れ出るほどではなかった。 この出血で、大丈夫なわけがない。 止血を、と思うが、これ以上強く傷を押さえられない。手足ならともかく、患部以外に圧迫するところもない。心臓より高くさせようにも、下手に身体を動かしたらもっと出血させてしまいそうだ。 思案する間にも、シャツに血が染みていく。 その時、津田の中に入ったままの乾の性器が、痙攣とともに精を放った。 そのわずかな衝撃にも、津田は眉根を寄せて身体を硬直させている。 抜きたい。抜いてあげたい、と思う。しかし亀頭球の膨張は最後の一滴までをΩの胎内に注ぎ込むまで治まらず、無理に抜くと傷つけてしまいそうだ。 とはいえこのまま血が止まらないようなら、20分以上もただ首を押さえているわけにはいかない。 体重をかけないようにするのも限界がある。 どうしたら、津田の身体の負担を軽減できるだろうか。 対応を迷った乾が再び顔を覗き込むと、津田の虹彩が上辺を虚ろに揺れている。 声をかけようと息を吸い込んだ時、独り言のように眠気を訴えた彼に、背筋が凍りついた。 長い睫毛が、ゆっくりと眼球に幕を下ろしていく。 「津田さん…… っ!!」 小さな謝罪の言葉を残して意識を失った津田は、どんなに呼んでもそのまま、目を覚まさなかった。 e137cc87-4110-4a79-9573-02e2897b1261
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