エスプレッソ・ロカーレ 1

午後の雨音

とある駅前の商店街の一角にある、小さな喫茶店「エスプレッソ・ロカーレ」。

コーヒーの淹れ方の一つである「エスプレッソ」が、イタリア語では「急行」と同じ言葉で示されることにちなんで、
ゆっくり走るローカル列車を意味する「ロカーレ」を後ろに繋げただけという、なんとも単純な名前の由来である。
急ぐも落ち着くも、その人それぞれ。みたいな。
そんな意味合いで先代が名付けたらしいが。

その古ぼけた扉の向こうには、まだ年寄りと呼ぶにはだいぶ早そうな男性の店主と、
高校をでて間もなくの、若い女の子が切り盛りする姿があった。
その落ち着いた店内は、客の姿こそ少ないながらも閑古鳥ということは殆どなく、
コーヒーの香りとともに女の子の小気味よい足音がしていた。

平日、それも週のアタマの月曜の、雨雲が重い14時過ぎ。
今日は今朝から生憎の雨模様、それも、夕方頃にはだいぶ強くなるとの予報がなされていた。