午後の雨音

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男の話はこうだった。 数日前に街中でチンピラに絡まれてた際、一人の女性が怪我の手当てを施してくれたものの、手当に使ったハンカチとタオルを返そうにも連絡先を伺い損ねてしまった。 その事に気が付き、せめて手がかりにと慌てて撮った写真、ソレだけを頼りに差勝ちていたらしい。 男はカバンから、袋に詰めたハンカチとタオルを出し、机に広げてみせる。 明らかにその男の持ち物では無さそうな、薔薇のような花柄をしたハンカチと、薄紅色のタオルだった。 「で、掃除は終わったのかい?」 私まで、手を止めて聞いてしまいそうだったので、つい慌てて口走ってしまったが、 こんどはそれなりに効いたらしい。 「ちゃんとやってますっ! ホウキ片付けて終わりだしっ!」 バックヤード、裏の倉庫にパタパタと駆け込んで行き、そこから用具入れの扉の閉まる音がする。 「では…ごちそうさまでした。お会計良いですか?」 「あ、はーい。400円ですねー。」 「じゃ、また…来ますね。」 「ありがとうございましたー。」 挨拶がいつも元気な所だけは、褒めてあげようか…。
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