午後の雨音

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男が去ったのを見届け、皮肉交じりに希へ言ってみる。 「…で、どうせ、追い掛けてみるんだろう?」 「あは。バレち?」 知ってたくせに。と言わんばかりの顔である。 「こちらはもう、一通り片付いていますし、このまま今日は店仕舞しますから。…言っておきますが希さん、身の程は充分わきまえて…」 「じゃ、何かあったら連絡しますんで!お先!お疲れさまでしたー!」 言うが早いか、希は勢い任せで店から駆け出していく。 その背後には、だいぶ厚い雲が立ち込めている。 これは、私も早めに引き上げたほうが良さそうだろう。 なんて思いながら、営業中の札に手をかけた時だった。 「ごめんください、店のマスターさん?」 背後の声には聞き覚えが有った。 いやそれどころか、今さっきまでの話にも上がったばかりではないか。 「これは何と言いますか。どうも偶然ではない様ですが、如何なされました?」 その姿を見るでもなく。私は彼女にそう返した。 「そうねぇ。あの2人の事で、すこし。」 「それなら、中でお伺い致しましょう。どうぞ。」
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