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「2年1組は斎藤君だけ?」
そう言って、隣のクラスの内田は俺に襷を渡す。
俺は一人体育座りで、丁寧に蝶々にしたり、わっかにして振り回して遊んでいた。
手持ちぶさただった。
担任の井上先生はジャージに着替えて、放課後に校庭の花壇の前に集合だって言っていたはずだ。
今日は体育祭で行われるクラス選抜二人三脚のたった一回の練習日。
…なのに松石君が来ない。
いつまでたっても来ない。
他のクラスの連中は、すでに二人が1つにになり始めた状態だ。
「せーの」とか「いってぇっ」とかのきゃっきゃした声が聞こえる。
言っておくが別にきゃっきゃしたいわけではない。
この二人三脚はクラスの足の早い順で選ばれる。
体育祭のちょっとした余興みたいな出し物である。
松石君は野球部のキャプテン。
俺は 美術部だ。
俺たちは100メートルを11秒前半で走る。
「何でそんな走れるの文化部なのに?」
と、皆が思っていたが一番思ったのは俺だ。
「すまん斎藤。遅れた。ちょっと部長の仕事で…はぁはぁ。」
汗だくで松石君がやって来た。
「了解、大丈夫。」
部長の仕事があるなら仕方があるまい。
何故なら俺も部長。部をまとめるのは本当に大変なものだ。
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