魔王に摘ままれた

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魔王に摘ままれた

僕たちの世界は滅んだ。 それはとても唐突に訪れた。 その時が来るまで、僕らは想像もしなかった。 『まさか食物連鎖でてっぺんとった人間がこうも簡単にひっくり返される日が来るなんて』 それは空から隕石のように飛来して、無人だった公園に墜落した。 ニキビを潰した痕のようにぽっかり開いた穴から彼は姿を現し「ちょっと、やめてくれない?人をアクネ菌みたいに言うの」 「これは申し訳ありません。陛下がアクネ菌をご存じだとは存じ上げず。 僕の不徳の致すところであります、かねては陛下のおつむを過小評価していた、という罪を頂戴しまして、贖罪の為自害させていただきます」 「いや、頂戴しないで。何で君はそう隙あらば死にたがるの。丁寧に無礼だし君。勝手に変な罪作らないでくれない?暴君だと思われちゃう」 「はい、陛下はこの世界の頂点に君臨する魔王であり、世間の嫌われ者。無論、暴君でありますとも」 一端口をつぐんで、ジンは些か傷心したらしい男に、恭しい一礼を施した。     
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