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「では、そちらは強制わいせつをする意志はなかったということですね」
「はい」
被告人、五頭明は、弁護人の質問にゆっくりと頷いた。同級生の榎本佳純を集団でいじめて自殺に追い込んだ容疑で裁判となった。日本で初めて行われるいじめの裁判。
五頭は18歳、参政権の付与と成人として認められている反面、少年法は適応されない。
「では、榎本さんを殺害する意志もそちらにはなかったということは認めますね?」
「ありません。わたしたちは五頭さんをいじめてなんかないです」
「はじめから、いじめたとは言っていませんが。強制わいせつも、殺害する意志もそちらないが結果として自殺しまったということですね?」
「そうです。わたしたちは榎本さんに自殺しろなんて言って自殺させるようなことは一切していません」
「ならば、五頭さんは殺人罪に該当しません」
弁護士、升田弘信がそう言った途端、傍聴席が騒がしくなる。榎本の両親もぎょっとした顔でかれを睨む。慰謝料や損害賠償では気が済まない。死刑と言う形で実刑判決を強く望んでいた。
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