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真っ白な世界が続く――
一向に変わることのない景色。
歩き続けるうちにに焦りと恐怖に見舞われる、どうすればここから抜け出せるのか、気がつけば全力で走っていた。
永遠と変わり映えしない景色に、頭がどうにかなりそうだ。肩で息をする俺の息づかいだけが響く。
「くそっ、何だよここ!」
立ち止まると白い地面に汗が落ちた、膝に手をつき顔を振ると三、四滴飛び散る。こんなに汗をかいたのは久しぶりだった。
「あの......」
落ちた汗を見ていると、後ろから今にも消えそうな女性の声が聞こえた。
驚きよりも、安心感のほうが強かった。人がいる、それだけで不安は一気に少なくなった。
「あ、はい」
振り向くと三十代前半だろうか、黒髪が背中まで伸びた華奢な女性が不安そうなおもむきで立ってる、目鼻立ちが整っていてスタイルもいい、一言でいえば綺麗なお姉さんという印象だった。
「あの......ここが、どこか分かりますか?」
きっとこの人も俺と同じだ、気がつけばこの空間にいて、一人で彷徨ったあげく、俺と出くわしたというわけだ。
「いや、俺も分からないんです。気がつけばこんな所に立っていて」
彼女は俺の言葉を聞いて表情を曇らせた。肩を落として、目線を下げる。
「そうですか......」
ゆっくりと歩き出す彼女に遅れまいと俺も足を出した。どっちが前でどちらが後ろなのかも分からない、ただ、行く方を前、来た方を後ろとした。
「あの、俺、誠吾といいます、蓮尾誠吾」
「......佐伯美佳です」
彼女も二人なら心細さが和らいだのだろうか、初めに見た強張っていた表情が、少し和らいだように見えた。
「佐伯さんも、気がつけばここにいたのですか?」
「はい、ということは、蓮尾さんもですか?」
「あ、誠吾でいいですよ、こんな場所で心細かったんですよ、早く出口を探しましょう」
「わ、私もなんです......よろしくお願いします」
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