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――音が聞こえる......水だ!
水の流れる音、俺たちは音のする方へ走った、目の前に現れたのはごうごうと音を立てて流れる川だった。
川といっても流れている水でさえも白い、向こう岸までは十メートルはあろう川の部分だけ、白い空間が歪んでいた。
これは川と呼べるものなのだろうか、流れる音といい、俺の頭の中ではこれは川と認識されていた。
その上流のは見えないほど遠くから流れていて、下流はまた見えなくなるほど遠くまで流れていた。不自然なまでに突如現れたその川は、俺たちの行く手を阻んだ。
「なんだよ、これ」
この川を渡らなければ、向こう岸に行くことはできない、しかしこんな激流に足を入れるのは、自殺行為といってもいいだろう。
「行きますか......」
突然踏み出した佐伯さんが、呟いた。
「はい」
「うん」
佐伯さん、季蘭ちゃん、利蔵さんの三人は激流に向かいゆっくりと歩く。
「ちょっ、危ないって!」
「え? どこが?」
佐伯さんの声に張りが出ている、足が一歩入った所で三人は振り返り俺を見る。
「お兄ちゃん、早く早く!」
季蘭ちゃんが手ぐすねを引く、利蔵さんは笑顔で微笑んでいる。
「蓮尾さんよ、こんな穏やかな川、子供でも渡れるぞ」
「う、嘘だろ?」
三人は、ものすごい勢いで流れている川に足を入れて立っていた。まるで水の抵抗を受けていないかのようだ。
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