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今日も私がテーブルに座ると奏はすぐに隣に来てくれた。彼女も私を求めてくれている。そう思うだけで幸せの鼓動が胸の中で弾けた。奏は横目で私の首元を少し見てくれた。彼女の吐息を少し首筋に感じた。全身が鳥肌という名の歓喜の声を上げた。
誰に対しても優しいと、優等生だと、人は私に言う。でもそれは特別に大切な誰かがいないだけの話だ。私の中で、周りにいる人全員が五十点だった。五十一点もいなければ、四十九点もいない。全てが平均で同じ。だから誰にでも優しくできる。理想のタイプと聞かれたら『優しい人』と、その辺の道端に転がっているような言葉で返事をしていた。だってどう答えていいか分からないから。私はそんな冷たい子だった。
小学校の頃から『佐奈ってどんな子』というアンケート結果の上位三つ『優しい』『スポーツが得意』『勉強ができる』を私は粛々と実行し続けた。与えられた教科書に沿って機械のように勉強してきた。校内に紙で大きく張られた目標のような理想の子供。そう振る舞ってきた。でも部活で活躍できても、テストで学年一桁の順位を取っても、その先に何があるのか意味が見いだせなかった。父も母も姉もクラスメイトも部活仲間も、私の表面に塗装されたメッキしか見ていないように思えた。それを剥がした下に何があるのか、私自身少ずつ分からなくなっていった。
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