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テーブルを決めた時、佐奈が最初に座った。その瞬間、椅子取りゲームのような素早さで奏はその隣に座った。その泥棒猫の浅ましく軽やかな身のこなしを見た瞬間、私は本気でキレそうになった。トレーに乗せたBLTサンドやジンジャーエールをそのまま奏の頭上に落してやろうかと思った。コーヒーにガムシロップを注ぐようにサーッと静かに。でもそれをやったら隣に座っている佐奈まで汚れてしまう。私は佐奈を想い、すんでの所自重した。
奏とはこの前、文化祭でたまたまペアを組んで行動した。クラス委員である佐奈の負担を軽くしてあげる為に、転校生である彼女の面倒を少しみてやった。ただそれだけだ。まさか私と佐奈の休日まで割り込んでくるなんて、思いもよらなかった。佐奈目当てで私に近づいてきたって事だ。
奏が佐奈の首元を横目でチラッと見た。鋭く細めた獲物を狙う目をしている。首にキスでもしようとでも考えているのだろうか。最初にそこに口づけするのは私だ。そこはお前の席じゃない。私だけの場所だ。
正面に座っていた佐奈が『垂れてるよ』と言いながら、紙ナプキンで優しく私の口を拭いてくれた。佐奈に触れられると私は子猫になったような気持ちになる。佐奈に見つめられながら私はごくんと喉を鳴らした。
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