香菜

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 当然、高校でも佐奈と同じ部活に入ると決めていた。けれど彼女は突然バスケをやめてしまった。理由は分からない。私もあえて聞くことはしなかった。でもその話をしてくれた彼女の目は、どこか遠くの空を見ているように寂しげだった。  私も一緒にバスケやめた。佐奈を想えば、それまで積み上げてきた物も簡単に捨てることができた。その時、私は彼女への恋心に気づいた。後ろ姿に追いつく為に走ってきた訳じゃない。肩を並べる為に努力してきたんじゃない。背中を抱きしめたいから、佐奈とずっと一緒に居たんだと気づいた。憧れという名の種が、恋という花となって私の胸に咲いた。  佐奈以外の全てを捨てる覚悟が私にはある。彼女が転校するなら私も転校する。深い穴に落ちていくなら、私も一緒に落ちていく。佐奈が痛みを感じたら、私も同じ場所に傷を作る。どこまでも、ついていく。私は佐奈に作ってもらったのだから。この愛は、ずっと続いていく。
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