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佐奈がトイレにでも立ったら、その隙に二人だけで席を変えようかとも思った。でもそれをやったら香菜ちゃんがかえって気を使ってしまう。彼女は一人ぼっちの子の気持ちに寄り添ってあげられる優しい子だ。佐奈はどうでもいい、香菜ちゃんの為に私は怒りを堪えることにした。
あーあ、せっかく香菜ちゃんがよく見えるように正面に座ったのに、隣にこいつが居るせいで気分が台無しだ。過ごした年月がちょっと長いからといって何なんだ。どうせ無理やり土曜日のお昼ごはんに付き合わせているに違いない。相手の気持ちも考えないで…。そういうのは束縛というんだ。
香菜ちゃんの食べる姿は子供みたいに可愛い。自分を偽らない純粋さがある。さっきも口元からソースを垂らしてしまっていた。そういうちょっとドジな所も愛おしい。食べる瞬間、香菜ちゃんは私を見ていた。私も視線に気づいて『好きだよ』という気持ちを瞳に込めて見つめ返した。彼女の瞳は大きく、そして子猫のように真っ直ぐだ。長いまつ毛。ちゃんとお化粧をすれば、もっと綺麗になるはず。ああ、口元のソース、私が拭いてあげようと思ったのに。いや、彼女と二人きりなら頬と一緒に舐めとってあげたいとさえ思った。
佐奈は中学から香菜ちゃんの友達という事らしいが、私と香菜ちゃんはもっと前から、もっと深い所で繋がっている…。安っぽい友情なんかじゃない。
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