雪の奇跡

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 無理やり区分するならば、赤道付近は年中夏だ。そして、北や南に向かうにつれ、春、そして秋となる。南極は、秋が少し肌寒くなった程度の陸地だ。昔存在したという北極と呼ばれる場所は、今はただの海である。氷は全て溶けてしまった。  冬というものが存在しないのだ。当然、雪が降ることなどない。そこまで気温が下がることもないから、氷の結晶などできようものがない。 だからこそ、雪が降れば世界が終わるとされていた。雪がふるような異常気象が発生するなど、文字通りこの世の終わりとしか思えない。昔のように、異常気象を引き起こす原因があるわけでもないのだから。  人類の歴史は、千年後退したと言われた。壊れ行く世界の中で、人口は激減、砂漠化の異常な進行、文明の利器と呼ばれるものが使えなくなり、やがては技術までもが失われてしまったのだ。  今暮らすのは、その時代を生き残った子孫たちであるという。それが幸運だったのか不運だったのか、それを知るすべはない。  ここまでは、学校で教えてもらう内容である。幼い頃から言い聞かせられる内容でもある。何故わざわざ、そんなことを聞いてくるのだろう。 「雪は、この世を滅ぼす悪魔の花だって知ってるだろ?」 「そうじゃないよ! どんな感触なのかな。雪がたくさん降るのは、どんな景色なのかな」 「手が痛くなるほど冷たいって言われてるぞ」 「それって、どんな感覚?」     
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