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そう言ってわざとらしく舌を出すエイミー。このクラッカーボールは3日前に彼女が父親にせがんで買ってもらった物だ。
ジェイムズとキャサリンは安堵するように息を吐き出すと、予備電源で作動しているエアコンから運ばれてくる冷たい空気を吸い込んでようやく落ち着きを取り戻した。
「……エイミー、それは室内で遊ぶものじゃない。仕舞いなさい」
「はーい。ごめんなさい」
まるで自分が感染していることなど気にしていないかのようにエイミーは明るく返事をしてクラッカーをスカートのポケットにしまい込むと、黒ずんだ右手を口に当てて大きな欠伸をする。
「ねぇパパ。眠たいから少し眠ってもいい?」
ここまで来るのに13歳の少女はかなりの体力を消耗していたのだろう。彼女の顔は本当に眠たそうだったのでジェイムズは首を縦に振る。
「ああ。パパとママは起きてるからお前は寝てていいぞ」
「うん。お休みパパ、ママ」
「お休み、エイミー」
「お休みなさいエイミー」
部屋の隅から隅へと向けて就寝の挨拶を交えるジェイムズ一家。
エイミーが眠ったのを見届けた後、キャサリンは夫の方へと向き直る。そして口にしたのは謝罪の言葉。
「あの……あなた。さっきはごめんなさい。私きっと疲れてるのね」
自身の額を手で押さえ、ゆっくりと顔を左右に振るキャサリン。
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