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HOUSE
床から壁、そして天井も真っ白に塗られた広く殺風景な部屋。
食料や毛布、ラジオや簡易トイレなども設けられたこの場所は災害やテロが起こった時に避難場所として使われる地下セーフハウスの中。
今、ここには3人の家族が部屋の隅にそれぞれ腰を落として互いの動向に注意を払っていた。
細身の中年男性であり家長のジェイムズ、夫と同い年の妻キャサリン、そして今年中学に入ったばかりの娘エイミー。
彼らは虚ろな目で真っ白な部屋の中心を見つめる。
そこにはたった1発だけ弾の込められた拳銃が床の上に無造作に置かれていた。
「私達、ここに到着してからどれくらいの時間が経ったかしら」
ジェイムズから見て対面の位置に座る妻のキャサリンがぼそりと呟く。少し寒いのかロッカーから取り出したタオルケットを膝にかけている。
彼女は明らかに苛立っていた。今座っている位置からは壁に掛けられた時計が見えないからだ。
「一体いつになったら助けは来るの。こんな状況頭がおかしくなりそうよ」
布の面積から少しはみ出したキャサリンの足首には獣に噛まれたような生々しい傷が付いていた。
「落ち着けよキャサリン。まだ半日も経ってない」
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