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壱 天使が舞い降りたコンビニ
ここは、とある町の一角にあるコンビニ「ACマート」。
コンビニとは本来手軽な買い物のために訪れるべきものだが、その少女はコンビニに入り買い物をするでもなく、それどころか商品を選ぶこともせず、ただただウロウロしていた。
彭城日葵、十五歳。近所の中学校に通う三年生。
エスカレーター式の私立に入学したことを幸いに受験生として勉学に勤しむべきこの時期、暇を持て余している彼女はここ最近、ACマートに通うことを日課としていた。理由は一つ。
「・・・(今日もいた。・・・天使様)」
日葵が天使様と呼ぶ 彼 はACマートでバイトをしているらしい若い男性。完璧すぎる営業スマイルを整った造形に張り付けた漫画でしか見たことないようなイケメンをたまたま買い物に立ち寄ったコンビニで発見してしまった日葵は、年頃の乙女らしく、一目で恋におちた。
早い話が非常に短絡的かつ無鉄砲な一目惚れである。
背格好から見て大学生くらい、ネームプレートには『榊』の文字。
彼に関するそれ以上の情報を日葵は持ち合わせておらず、ましてや話しかける勇気などあるはずもなく、恋愛に熱心な性格でもない日葵は、毎日放課後コンビニに訪れ天使パワーの恩恵を受けるだけで満足していた。
「あのぅ、お客様?」
「ひいいいっ!?」
しかし、日葵の学歴の割に小さなおつむでは思い至らなかったことだが、毎日毎日買い物もしないのに制服姿でウロウロする不審な学生など店側にとっては迷惑以外の何物でもない。
「申し訳ございません。お客様、商品の方はお決まりになりましたか?」
「ひ、ひぁ、い、今から決めますぅ」
天使様 とのファーストコンタクトは日葵が妄想で思い描いたような運命的なものではなかった。
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