第二章 家

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第二章 家

特にやることも無い日曜日。僕は8時を過ぎても布団の中。起きたい気持ちはあるものの身体全体が石を載せたくらいに重く感じる。結局、布団から出られたのは9時頃だった。両親はちょうど家を出るところだった。「家のこと頼むね。」そう言って出かけて行った。僕は家に自分だけしかいないこの時間がたまらなく好きだ。大半の友達は親が共働きだったり、片親だったりで家に1人でいることが多い。しかし、僕の母親は専業主婦のため常に家にいる。父親は単身赴任で、平日は母と二人きりだ。正直、思春期の僕にとって母と二人きりというのは非常にストレスを感じる。実際、毎日のように喧嘩をする。時々、家に帰りたくないな、と思い塾の閉館まで自習室で時間を潰す。勉強はしないが。顔を洗って、着替えて、朝食を済ませるのに10分もかかった。両親が帰ってくるまでの時間は限られている。そのため無駄な時間の消費はなるべく減らしたい。別にやりたいことがあるわけではないが、落ち着ける時間が欲しい。とりあえず好きな音楽を大きめの音で流し、口ずさむ。だんだん気持ちがのってきて、他のことを考えないで一心に歌う。とても気持ちが良い。疲れを感じるまで僕は歌い続ける。同じ曲を何度でも。はぁ...歌い終わった後の達成感のようなものは何とも言えない。そろそろ昼飯を作るか。昼飯を作ることを親に課されている。料理は嫌いでは無いが、焼きそばと焼うどんくらいしか作れない。「こんなことなら、小さい頃から料理やっとけばよかったな...。」と独り言を呟く。でも、過去は変えられない。そんなことを考えているうちに昼飯の焼きそばが出来た。素早く支度をして食べ始める。口の中に広がるソースの香りが心地よい。1人前の焼きそばはあっという間に無くなった。両親が帰ってくるまで2時間程となった。残った時間を自分のために使おうと思ったが、疲れて帰ってくる両親のために洗濯物でも畳んでおくか、と思いテレビを付けながら畳み始めた。別に両親に良く思われたいわけではない。悪く思われたくないのかもしれない。身近な人にほど。ガチャ。「ただいまー」「お疲れ」意外と早かったな...と僕は心の中で呟いた。
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