第三章 始

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第三章 始

始まりの月曜日。僕が一番嫌いな曜日だ。学校が始まってしまうから。でも、何故学校が嫌なのかは自分でも分からない。いじめられている訳では無いし、友達がいない訳でもない、部活も充実している。考えられるのは勉強が出来ないことくらいだが、それだけが理由とも思えない。体調が悪いのは確実な理由の一つである。1、2時間目に集中的にトイレと保健室にいく。酷い時は早退もする。病名は過敏性腸症候群。現代人に多い病気である。通勤、通学の時にお腹が動くことが多いためその時間帯に腹痛が襲う。でも、そこを乗り越えれば基本大丈夫なのだ。そのため、周りに仮病を疑われる。僕も知っている。別に周りに同情して欲しい訳では無いが、疑われるというのは当然気分が良いものでは無い。体調が良ければそんな苦労は無かったのだが、こればかりはどうしようもない。昨年から続いている体調不良。原因は勉強と両親、学校、塾の三つからの圧力によるストレスだった。そして、周りが出来ていることが自分には出来ないという劣等感も感じていた。そのため、最近は集団授業さえも辛い。授業を受けている時に襲うどうしようもないくらいの不安。そして居心地がたまらなく悪い、そんなことまである。今日も強い強迫観念にとらわれていた僕を現実に引き戻したのは朝の予鈴だった。一週間の始まりとも言える今日の朝の予鈴の音は繰り返すように僕の心に響き渡った。「おはようございます。」身体はまだ寝ているのに...。そんな戯言を言えるならまだ大丈夫だろうと思い込ませながら静かに席に着いた。千里の道も一歩から。まずは数学から気概を見せよう、そう誓って一週間は始まった。
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