プロローグ

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「おい、光(ひかり)は何にした? 」 「ん? 何が? 」 「え、何がって……、クリスマスプレゼントだよ」  ────あ。 「そっか。クリスマスかぁ……」  寒さがより一層増す12月。  息を吐くと白くてふわふわっとした綿菓子みたいな何かが出てきて、空へと消えていく。寒いのは嫌だけれど、いつも地味なこの街が、この季節になると途端にオシャレをし出す。  キラキラと輝きを見せる風景は何だかこう……、「クリスマスが来るぞっ! 」と私たちに伝えているようで、自然と笑顔になってしまう。 「プレゼントなんてなんも考えてなかったよ」  私はもう高校3年生。来年は大学生だ。  サンタさんの正体も当然ながら知っている。もう少しで社会人になる。大人への階段を上るのももう少しだ。 「可愛くないの。近所のおばさん優しいからこの時期になると何でも買ってくれるじゃんか」 「私は充(みつる)みたいに子供じゃないんですよー」  グラウンドにいた生徒達の騒ぐ声が止まる。  光は黒板の左上にある時計を見上げた。 (もう15時か……早いな)  最近時間が経つのが早くなってきたような気がする。  気のせいかもしれないけれど。 「子供でもいいさ。だってただで好きなものが手に入るんだぜ?大人になったらこんな甘えられないんだからさ、今のうちに甘えといた方がよくね? 」 「──充くん。授業は15時05分までですよ」  先生の咳払いが聞こえた。皆充を見てクスクスと笑っている。  充は恥ずかしくなって教科書で顔を隠した。  その様子を見て光も思わず笑った。  焦ったせいか充は教科書を逆さまに持っていたのだ。  ちょうど前の席の人で教科書が隠れていて、その笑いのツボに気がついたのは、席が1番後ろで充の隣の席である私だけだ。 (ほんと充はいつになってもアホだなぁ)  言うまでもない。    光と充は幼なじみだった。  互いの母親がもともと友達同士らしく、その関係で充とはもう既に気がついたらずっと一緒にいる仲だったのだが、記憶している頃から既に充はアホだった。  個人的に馬鹿らしくて1番笑ったのは、小学4年生の12月24日。クリスマスイブだ。私は充のせいでその年にサンタさんの正体を知ってしまったのだ────。
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