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 高校の授業が終わり、帰宅部の雄大(ゆうだい)は家に帰ろうと駅を目指していた。その通り道である大きな公園を進んでいると、不意に足を止めた。前方には同じ学校の制服を着た一人の女子生徒がいた。彼女は下を向いて歩いていた。手にスマホを持ち、その画面に夢中だった。公園の中だからいいものの、よろよろと不安定な足取りは、見ていて危なっかしい。  雄大はその少女を知っていた。知っているだけでなく、苦手な存在でもあった。なるべくなら関わりたくない。足は自然と彼女と距離を取り、通りの端を進んで行く。気づかれないように警戒しながら、ゆっくりと。  しかし、前を歩く少女は背後の気配を察したのか、突然振り返った。雄大は蛇に睨まれた蛙の如く、動けなくなる。なぜ止まったのか。別にやましいことしているわけでもない。そう思い、すぐに彼女を追い越して駅に向かおうとする。そもそも、少女が話しかけてくるとは微塵も思っていなかった。特に挨拶をするでもなく、雄大は歩いて行くが、背後から足音が聞こえてくる。気になって振り返ると、そこには苦手な少女がいた。 「あ。やっぱり。お前、同じクラスの奴しょ? ……名前なんだっけ?」  この喋り方からして雄大は激しく抵抗感があった。彼女とは確かにクラスは同じだが、一度たりとも話したことはない。やや人見知りの雄大に、この慣れ慣れしさはきついものがある。  それだけではない。彼女の派手な見た目もまた近寄りがたい。校則を無視した明るめな茶髪に、日焼けしたような肌は、近くで見ているだけで目がチカチカした。
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