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それを言ったのは、私じゃなくてまぁちゃんだった。
「え? 」
「えー、だってさー。ここでずーっと過ごしてきてさ。父さんと母さんがいてさ。りぃちゃんがいてさ。おいしいご飯食べて、あったかいお風呂入って。テレビ見ながらミルクティーのんで。幸せっていうより、あったかいものに包まれてる感じ。なんだろーって思って。そしたら、家族のぬくもりかなーって。それが一番しっくりくるなーって。」
ニッと、まぁちゃんは笑う。
そうだね。
その通りだ。
「私たちさ。秀でた才能があるわけじゃないけどさ。うちもお金持ちってわけじゃないけどさ。」
「うん? 」
「でもさ。家族のぬくもりってやつがあって、幸せだよね。」
「あはは、そうだね。」
私も、ミルクティーをぐいっと飲み干す。
あったかくて甘い味が、喉を通っていくのがわかった。
「まぁ、たまに出ていきたくなるけどね。」
「母さんに怒られた時とかねー。あ、今度から、そうなったらりぃちゃんの家に行こーっと。」
「えぇ、入れないかも。」
「なんでー!? ひどい!! 」
「冗談だよ。」
私たちは笑いながら、お風呂にいる母さんに、先に寝るねと伝えて。
二人で階段をのぼって。私達は大きな子ども部屋に入る。
二人で一部屋。
2台並べられたベッドは、ピンク基調と青基調。
私がピンクの方、妹が青の方のベッドへなだれ込む。
「あー。こうやってりぃちゃんと一緒に寝るのも、今日でいったん最後だね。」
まぁちゃんは、ベッドの上に胡座をかいて言う。
今度は、私としっかり目が合った。
「たまには帰ってきてね? 」
「当たり前でしょ。一緒にライブも行かなきゃいけないし。」
「あっ、時給いいバイト探してね。そしたらりぃちゃんにグッズ買ってもらおーっと! 」
「え、嫌だよ。私のために使うの。」
「え、ずるい!! 」
「ねぇ、うるさい。父さん起きちゃう。」
さっき飲んだミルクティーのおかげかな。
身体はぽかぽかと、あたたかかった。
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