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「りぃちゃん、父さんのカップ割った時に泣いたよねー。」
「あれは音にびっくりしたから。そういえば、その後隠すために、カップ土に埋めたよね。」
「うん。で、母さんにちょーー怒られた。」
「あの時はふたりで泣いたねー。」
ちいさい頃の記憶が、少しずつ蘇る。
「母さん怒ると怖いよね。お祭りの時もさー。」
「あぁ、私とまぁちゃんが二人ではぐれた時ね。」
「そうそう。真穂たち、ちゃんと迷子センターで放送してもらったのにねー。」
「二人で泣かずに迷子センターまで行ったもんね。あれは偉かった。」
「でも、見つかった時にめっちゃ怒られたよねー。」
「あれは未だになんで怒られたか謎。」
あはは、とまぁちゃんは笑って。
私は、マグカップに口をつける。
まだ熱くて飲めない。
「お祭りでさー。毎年ヨーヨー釣りしてさー。」
「まぁちゃん下手だよね。」
「下手じゃないよ! りぃちゃんがうますぎるの! お金入ってたヤツ取ったよね? 500円入ってたの!」
「え、取ったっけ? 」
「取ったよー! でも、お金取り出せなくて。父さんが、地面に叩きつけて割ったんだよ。」
「あー、なんかそんなことあったかも。」
「そしたら、500円玉転がってっちゃってさー。どっかいったんだよね。」
「うわ、懐かし。言われてみればあった気がする。そのあとどうしたんだっけ。」
「覚えてないー。母さんに怒られたか、3人で内緒にしたかじゃない? 」
まぁちゃんが、ずず、とミルクティーを啜る。
私もそれを見て、マグカップにくちを付ける。
ずず、と音を立てて、やっとミルクティーが少し口に入った。
「ミルクティー、母さんの作るやつのほうがおいしいよね。どんなに同じ作り方してもさ。」
「それはわかるー。真穂も自分で作ってもおいしくない。」
「まぁちゃんミルクティーなんか自分で入れないでしょ? おにぎりすら自分で作らないのに。」
「いれるよ!! 誰もいない時とかいれてるからね! 」
まぁちゃんは、ごくごくとミルクティーを飲んだ。
半分くらいまで減ったマグカップを横目に見る。
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