ミルクたっぷりのそれはあたたかくて

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「りぃちゃんが初めて登校した日さ。あ、小学校ね。」 「うん。」 「母さん泣いてたんだよ。」 「えっ、知らなかった。」 「りぃちゃんよりランドセルのが大きいって。なのに一生懸命歩いてるって。」 「えぇ、そうだったんだ。てかよく覚えてるね。その時3歳とかでしょ? 」 「母さんが泣いてるの見て、真穂も泣いてた。」 「泣いてたんかいっ。」 あはは、って二人でまた笑って。 私もミルクティーを飲む。今度は、2口くらい飲める。 「まぁちゃんは、結局小学校から高校まで、ずーっと私と同じとこ来たね。」 「真穂が行きたいとこに、たまたまりぃちゃんが先に行っただけだよー。」 「えー? 嘘でしょ? 」 「てゆーか選んだのは高校だけだからね? 中学までは、ここに住んでるから嫌でも一緒だし。大学は流石に違うでしょー。」 「ほんとかなー。私の話聞いたら、また大学も同じとこ来たくなるんじゃない? 高校の時みたいに。」 そんなことないから! とムキになるまぁちゃんを笑う。 でも、心のどこかで、きっとそんなことはないんだろうな、とも思う。 「私が受かった時さー。」 「大学? 」 「うん。父さんが一番喜んでた。」 「え、そうなの? 」 「うん。私が一緒にいて、逆にちょっと冷めるくらい。」 「うーん、ま、父さんですからー。想像つく。」 「まぁちゃんも覚悟しといた方がいいよ。喜びすぎてこっちが逆に冷静になる。」 「あと3年後かー。覚えてるかなー。」 そう。 私が大学に受かった時、父さんは私よりも喜んだ。 母さんはケーキを買って、お祝いをしてくれた。 そうだ。 その時も、ハンバーグだった。 「ハンバーグ。おいしかった? 」 「え? 」 「りぃちゃんハンバーグ好きだから。母さんが、今日何がいいかなって言ってたから。真穂がハンバーグにしたら? って言ったの。」 「うん。おいしかったよ。」 私の答えに、まぁちゃんはニッと笑って、ミルクティーをぐいっと飲んだ。 もうほとんど残ってない。 ドラマでは、主人公の女の人が、本当に好きな人と旅立つシーンが流れている。 ラストシーンだ。 「あー。やっぱりそっちの男を選ぶかー。」 「えっ。見てたの? 」 「うん。だってついてたじゃん。」 「こんな話しながらでも見れるなら、さっき邪魔しないでとか言わないでもよかったじゃん。」 「それはそれ。」
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