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窓の外には急ぎ足な人たちが見える。
珈琲を飲みきりカフェから出ると風が冷たい。
手袋が無いからポケットに手を突っ込む。
そのうちに白い物がちらついてると思ったら、雪が降ってきた。
コートの襟を立て急ぎ足に駅へ向かう。
満員電車。
人のぬくもり。
疲れ顔、寝てる顔が目に付く。
なんだが寝てしまいそうだ。
この中はあったかいね。
だけど、駅に着き改札を出ると風と雪が冷たい。
寒くなり、自転車を漕いで帰りにつく。
バスに乗ろうと待っている人も、
歩く人も、
寒そうに首を縮めている。
風を切る自転車。
雪で前が見えなくなる。
マフラー、手袋が無い。
なぜ、こんな日に限ってなるかな。
やっと見えてきた我が家。
電気がついている。
扉を開けると湯気が漂ってくる。
コトコトと美味しそうな音や、美味しそうな匂いを運んでくれているみたいだ。
少し焦げているのかな。
そんな感じだ。
ふふ。
君の鼻歌が聞こえてくる。
つられて歌ってしまいそうだ。
「ただいま」
声を掛けると、ご機嫌な声が返ってきた。
「お帰り」
思わず背から抱きしめていた。
「急にどうしたの」
「あったかい」
俺の手を触り、こう言ってくる。
「冷たっ」
「温めてくれる?」
そう言うと、俺の手を挟み持って息を吹きかけ擦ってくれる。
どれぐらい時間が経っただろう。
「ご飯を食べると暖かくなるかも」
「晩ご飯は何?」
「シチュー」
「嬉しいな」
着替えて椅子に座ると差し出してくれる。
「ありがと」
「どういたしまして」
君の笑顔と言葉が嬉しい。
ああ、この家は温かい。
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