第四十四章 誤解

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蛍の連絡先を知っても、直ぐに連絡出来なかった。 研究の為に年内は大阪に来ていると言っていた。 きっと忙しくしている…そう思うと躊躇する自分が居た。 でも、返さないわけにもいかず、電話をしたのは週末の夕方だった。 電話をして、コールを聞きながら、少し緊張。 『はい』 と、突然の通話に、掛けている自分が驚く。 「あっ…は、葉山響です」 ナゼかフルネームで名乗った。 向こうで笑った蛍の声が聞こえた。 『どうしたの?』 「あっ、佳世子から連絡先を聞いたの。勝手にごめんね。マフラーを返すのにどうしても連絡先が必要で…」 『あぁ…。良かったのに…』 それは、マフラーを捨てても良かったという意味だろうか。 連絡なんてしない方が良かったかもしれない。 そう思った瞬間 『わざわざ、ありがとう』 お礼を言われて、少しホッとした。 「ううん、こちらこそ…ありがとう。近くまで持って行かせて貰うか、送らせて貰うか…蛍の都合のいい方で返させて欲しいの」 そう言うと、一瞬の間があった。 『…月曜日、仕事の用で神戸方面に行くんだ。良かったら、仕事終わってから三宮辺りで会わないか?』 想像もしなかった蛍からの申し出だった。 「…20時とかでも大丈夫?仕事が立て込んでて」 『いいよ。無理だったらそれはそれでいいから、無理だけはしないように』 「…わかった。蛍も仕事入ったら遠慮なく言ってね」 蛍と月曜日の夜、三宮の駅前で待ち合わせした。
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