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蛍の連絡先を知っても、直ぐに連絡出来なかった。
研究の為に年内は大阪に来ていると言っていた。
きっと忙しくしている…そう思うと躊躇する自分が居た。
でも、返さないわけにもいかず、電話をしたのは週末の夕方だった。
電話をして、コールを聞きながら、少し緊張。
『はい』
と、突然の通話に、掛けている自分が驚く。
「あっ…は、葉山響です」
ナゼかフルネームで名乗った。
向こうで笑った蛍の声が聞こえた。
『どうしたの?』
「あっ、佳世子から連絡先を聞いたの。勝手にごめんね。マフラーを返すのにどうしても連絡先が必要で…」
『あぁ…。良かったのに…』
それは、マフラーを捨てても良かったという意味だろうか。
連絡なんてしない方が良かったかもしれない。
そう思った瞬間
『わざわざ、ありがとう』
お礼を言われて、少しホッとした。
「ううん、こちらこそ…ありがとう。近くまで持って行かせて貰うか、送らせて貰うか…蛍の都合のいい方で返させて欲しいの」
そう言うと、一瞬の間があった。
『…月曜日、仕事の用で神戸方面に行くんだ。良かったら、仕事終わってから三宮辺りで会わないか?』
想像もしなかった蛍からの申し出だった。
「…20時とかでも大丈夫?仕事が立て込んでて」
『いいよ。無理だったらそれはそれでいいから、無理だけはしないように』
「…わかった。蛍も仕事入ったら遠慮なく言ってね」
蛍と月曜日の夜、三宮の駅前で待ち合わせした。
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