11625人が本棚に入れています
本棚に追加
/618ページ
オフィスのミーティングルームから漏れ聞こえるくらい、島田課長はヒートアップして先輩の滝さんを叱責していた。
半分がガラス張りになっていて、中の様子は見たくなくても視界に入る。
一番若くて、先日滝さんと私の話をしていた倉吉君は、私の席の前で、振り向かないと見えない位置なのに、わざわざしっかり振り向いてミーティングルームをガン見していた。
「倉吉君」
私が呼ぶと彼はこちらを見た。
「よそ見してないで、この資料、目を通しておいて」
私は彼に資料を渡す。
「島田課長、怖いっすね」
彼はパソコン越しに私に言う。
まだ話題に出すかと思いながら、私は反応を返さなかった。
「滝、ここのところ成績も伸びてねぇしな。既存客からの信用落とすようなことしたらダメだよな」
隣の席の先輩がそう話した。
どいつもこいつも、人のことばかり気になるようだ。
「葉山」
そう呼ばれて顔を上げると、ミーティングルームの扉から島田課長が顔を出していた。
みんな慌ててデスク上の仕事に目を落とす。
「はい」
私は立ち上がる。
「悪い。こっち来れるか?」
「あっ、はい」
私は急いでミーティングルームへと駆け寄った。
入ったミーティングルームは、何とも言えない重い空気。
滝さんは後ろ姿だけ見ても悲惨さが漂っていた。
島田課長はミーティングルームの窓際の席に座り、私は滝さんの少し後ろの横に立った。
「今回は葉山が一緒にお詫びに行って、誠心誠意話をして納得して貰ったんだ」
島田課長はまた厳しい口調でそう話した。
気まずすぎる。
私を巻き込まないで頂きたい。
最初のコメントを投稿しよう!