第四十三章 恋と愛

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「響、ごめん。癖で…」 私はイヤだと首を横に振って意思表示した。 「せやけどな、俺らが夫婦やったことは変えられへん事実やねん」 そんなことわかっている。 慶太はしゃがんで私に寄り添う。 「そこだけはどうにもならん事実やから、受け入れて貰わなあかん…」 私、受け入れてない? これは私のワガママ? 「弘美には…田所には、5年前気付いてやれんかったこと謝った。嘘なんか必要なかったのにってことも伝えた。でも、今は、響が居るからー」 その言葉に、頭を鈍器で殴られたような感覚になる。 「…私が居なかったら?」 「えっ?」 「私が居なかったらやり直した?」 慶太を見上げる。 「いや、ちゃうやん!」 「違わないよ。私が居なかったら、弘美ちゃんとやり直した?」 「響!やめろや!俺はちゃんと弘美に響のことが大事やって話したんや!」 「それはどうして?」 慶太の気持ちは、意識した時からずっと真っ直ぐで、いつも私を見てくれていた。 「どうしてって何やねん」 蛍の時とは違う、真っ直ぐ私しか見ないその目に、私は安心して身を任せた。 だけど、弘美ちゃんが現れてから、微妙に変化を感じていた。 「慶太……」 私に向ける眼差しと弘美ちゃんに向ける眼差しは違う。 「慶太の心が、まだ、弘美ちゃんを愛してるんじゃない?」 私の問い掛けに、慶太の眉間にシワが寄る。 視界が涙で揺れる。 「だから、弘美ちゃんを拒めなかったんじゃない?」 「そんなこと…」 「私の知ってる慶太は、真夜中に女の子を部屋に入れたりしないし、女の子の入院先に一人でお見舞いなんか行ったりしない。彼女が居るのに泊めたりしないよ」 「だから、それは!」 「元夫婦だからなんて理由にならないよ。慶太は、まだ、弘美ちゃんを愛してるんだよ…」 自分の中にあった疑った不安を、言葉にして彼にぶつける。 無意識だからこそ、私もずっとモヤモヤしていた。 「じゃぁ!響を好きな俺の気持ちはなんやねん!!」 それもまた、偽りじゃないのはわかる。 「…慶太は弘美ちゃんを愛していて…私に恋をしてくれてたんじゃない…?」 私の問い掛けに、慶太は横に首を振る。
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