第四十三章 恋と愛

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好きな人の一番になりたいだけだった。 私の願いは、そんなに難しいことなんだろうか… 「パパぁ!いってらっしゃーい!」 涙を拭いながら歩いていると、前を歩いていた男性が、マンションの方を振り返り笑顔を向けて手を振った。 私はその視線を辿る。 マンションのベランダから幼い子供が、母親に抱かれて手を振っていた。 幸せそうな光景。 この夫婦はお互いを一番に思って結ばれたのだろうか。 それとも、三村のように、誰かを胸に秘めて結ばれたのだろうか。 私は…ワガママなのかもしれない。 30歳にもなって、一番なんて無理な話なのかもしれない。 佳世子や水木先輩のように、お互いを一番に思い合うなんて、そんなことはこの歳になっては無理なことなのかもしれない。 だから、それを求める私は、身の程知らずのワガママなんだ…。 でもね… やっぱり、一番になりたかったー
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