第四十四章 誤解

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蛍は驚いた顔をした。 そしてすぐに、くしゃっと笑顔を見せた。 『バレたか。スマートに対応しようとしたのに、慣れないことしても、格好つかないな』 スマホ越しにハッキリ聞こえる蛍の声。 そして彼は、イタズラな笑顔を向けてくれた。 お互いにスマホをゆっくりと下ろす。 私も蛍も、それぞれ歩み寄る。 「本当にごめんなさい!」 時間は23時半前。 彼は3時間半以上もここで待っていたことになる。 お詫びのしようがない。 「いいよ。勝手に待ってただけだから」 蛍の言葉に私は横に首を振る。 「本当に、気にすんな。仕事だったんだろ?」 「でも、私の連絡が…本当に本当にごめんなさいー」 「響!」 彼に呼ばれて彼を見上げる。 「謝りすぎ。もうごめんはいいから」 そう言われて、他の言葉を探す。 「それ、貰うな?」 控えめに指差されたのは、マフラーの入った紙袋。 「あっ、うん。ありがとう」 両手で差し出して、蛍が受け取る。 受け渡しの時に一瞬触れた蛍の指が、氷みたいに冷たく感じた。 駅構内とはいえ、風も吹き込む場所、3時間半も待てば冷えてしまって当然だ。 「お茶…温かいお茶、ご馳走させて…」 私がそう提案すると、蛍は腕時計を見た。 「響、帰り遅くなるから」 「大丈夫!ご馳走させて!」 必死に言った私に、蛍はまた笑って、少しだけと頷いてくれた。
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