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結局、終電ギリギリまでお店で他愛ない話で盛り上がって、小走りで駅に向かった。
一滴もお酒なんて飲んでいないのに、躓いて転けかけて、彼に支えられて助かった。
一瞬触れた手が、さっきとは違って温まっていた。
それにホッとする。
「急がなきゃ、大阪行きの最終乗り遅れちゃう!」
慌ただしく駅に滑り込んだのは最終電車が出発する3分前。
「ご馳走さま!」
「ううん!取りに来て貰った挙げ句に待たせて、100円のコーヒーでごめん」
「いいや、楽しかった」
彼はそう言ってくれた。
「遅くまでごめん、帰れる?」
「うん!大丈夫!直ぐだから」
「うん。心配だから、帰ったらー」
そう言い掛けて、彼は途中でやめた。
「何?」
気になって問い掛ける。
「いや、心配だから、帰ったらショートメールしてって言おうと思ったけど、彼氏嫌がるかなって思って」
蛍は慶太のことを気にしてくれていた。
慶太のことを思い出した。
「でしゃばりすぎた、ごめん。またな」
優しい笑顔を向けてくれる。
その笑顔に大丈夫と首を横に振った。
「…またね」
笑顔を作って彼を見送る。
改札を潜って、別々のホームに向かった。
別れたと言えなかった。
どうして言えなかったのか、わからない。
だけど、言えなかった。
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