第四十四章 誤解

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ホームに上がると、ちょうど蛍も上がったタイミングでホーム越しに向い合わせになる。 大阪へ向かう最終電車がホームに入ってくるアナウンス。 蛍の方のホームには、最終に飛び乗ろうと人が何人か階段を駆け上がってきていた。 電車が見えてホームに入ってくる。 蛍に小さく手を振ると、彼は優しく微笑んでくれた。 すぐに電車が入ってきて、蛍が見えなくなる。 小さく息をはいて、下を向いた。 さっき言われた慶太の言葉が、胸にずっしり残っていた。 別れたんだから気にすることない。 だけど、私が弘美ちゃんに抱いた気持ちを、慶太はずっと抱いていたのかもしれない。 蛍と話した他愛ない時間が楽しすぎて、余計に胸を締め付けた。 大阪へ向かう最終電車が去って行く音。 その、音が遠退いた後、 「…響」 呼ばれて、顔を上げる。 蛍は向かいのホームに立ったままだった。 驚いて目を見開く。 「どうした?」 そう聞かれて、ゆっくり首を少しだけ傾げた。 「何かあったろ?大丈夫か?」 ホーム越しに問い掛けられたその言葉に、なぜか込み上げてくるものがあった。 大丈夫だと、何もないと、首を横に振るのに、視界がぼやける。 口から息が漏れて、下を向くと、涙が溢れた。
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