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第四十五章 運命
ホームに立ち尽くして、涙を拭っていると、側に人影が出来た。
向こうのホームから、蛍がやって来た。
「響…」
呼ばれて見上げると、蛍は心配したように私の様子を伺う。
「仕事、大丈夫じゃなかった?」
問い掛けられて、首を横に振る。
「俺に会うのイヤだった?」
大きく首を横に振る。
「彼氏と…何かあった?」
そう問い掛けられて、慶太の顔が浮かんだ。
口許に手を当てて、泣かないように押し込める。
「…響は、わかりやすいな」
そう言った蛍の眼差しが優しい。
「そうかな…」
呟くように言った。
「まぁ、それに目を背けていた俺が言うなって話だけど」
二人で顔を見合わせる。
思わず少しだけ笑うと、蛍も笑った。
「終電行っちゃったよ、どうするの?」
「まぁ、大人だから何とかなるよ。タクシーでも帰れる距離だし」
蛍は楽観的だった。
「確かに…」
私がそう返すと、蛍は頷いた。
「もう少しだけ付き合える?」
「えっ?」
「ちゃんと送るから」
そう提案されて、少しだけ考えて頷くと、蛍は私の手を引いて走り出した。
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