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ホームから改札へ駆け降り、そのまま駅を出る。
引っ張られるようにして、彼の行く先について走る。
人が疎らな真夜中の街を小走りで走り抜けた。
着いた場所はアミューズメント施設。
蛍は迷うことなく受付に行く。
私は辺りを見渡しながら、蛍の側についた。
「響、足のサイズは?」
「足?…23センチ」
そう答えて間もなくして、ボーリングシューズを手渡された。
「えっ!?」
有無を言わさずボーリング場のコースに連れて行かれて、ボーリングがはじまる。
「ちょっと、蛍?」
「響、ボーリングの経験は?」
蛍がシューズを履きながら問い掛ける。
「すっごい昔にあるけど…」
「俺も大学の時ぶり」
靴を履き終えた蛍がボーリングの球を持って、コースに投げた。
一本残して、ピンが倒れる。
「惜しい!」
私が声を上げると、蛍は2回目を投げてスペアを取った。
「すごい!」
「響もやってみろよ」
そう言われて、ボールを持って狙いを定めて投げる。
蛍とは違って、スピード感のないボールが、ゴロゴロと転がる。
意外と真っ直ぐ進んだボールは、これもまた意外にもピンを全て倒していきストライク。
「すっげぇ」
蛍の言葉に顔を見合わせて、目が合うと吹き出すように笑った。
「ストライクなのに全然カッコいい感じじゃない」
「いや、結果が全てだろ」
真夜中のボーリングは、お酒を一滴も飲んでいないくせに、二人で白熱して大盛り上がりだった。
その時だけは、何もかも忘れて、楽しんだ。
夢中で楽しんだ。
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