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結局一時間ちょっとで2ゲームを楽しんだ。
記録用紙を貰って、二人でお店を出た。
「蛍に勝てなかった」
「俺にも意地がある」
そう言われてまた二人で顔を見合わせて笑う。
三宮から元町への最終も、とっくになくて、私と蛍は真夜中の街を歩いた。
ボーリングの話をしながら歩いていると、ルミナリエのアーチが見えた。
もちろん真夜中だから点灯していなくて、白いアーチの横の歩道を歩く。
「ルミナリエの時期か…」
蛍がポツリと言った。
「見たことある?」
問い掛けられて、首を横に振る。
「点灯してる時間に、なかなか帰れなくて…」
「そうか…。週末もやってるから、今度彼氏と行ってみたらいいよ」
そう言われて、私は愛想笑い。
ゆっくりと並んで歩く。
「…喧嘩でもしたの?」
あれは喧嘩なのだろうか…
あれが喧嘩なら喧嘩別れになる。
「彼ね、バツイチなの」
蛍が目を丸くする。
「震災で両親を失って天涯孤独だった女性と結婚して、だけど理由があって…別れを切り出されて別れたの。だけど、最近になって再会して…」
私の話に、蛍は何も言わずに耳を傾けてくれた。
「…彼女より私を選んで欲しいって言ったのに、聞いて貰えなかった…」
思い出して、また、胸が痛む。
「慶太なら…全部受け止めてくれると、思ってた…」
だけど、弘美ちゃんこそが、慶太の特別だった。
「思い上がってたのかもしれない」
「そんなことないだろ…」
蛍を見上げて、苦笑いして首を横に振る。
「蛍と別れて…もう恋なんて出来ないかもって思ってたの。だけど、慶太はそんなことお構い無しに、何度も何度も、私にノックしてくれた」
何とも思って居なかった人が、徐々に心に残る人になって、いつの間にか大好きな人に変わった。
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