第四十五章 運命

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「慶太は、心に蛍が残って居ても構わないと…」 私はそれに甘えてしまった。 「慶太の気持ちなんて考えてなくて、彼の優しさばかりに甘えて…絆を築けなかった」 慶太が、執拗に蛍を意識していたのは、慶太のサインだったのかもしれない。 「私って…いつも自分で自分を追い込んで、周りが見えなくなって、結局ダメにしてしまう」 情けない自分に苦笑いして誤魔化した。 でも、蛍は笑わずに聞いていた。 「…その、元奥さんと彼氏はくっついたの?」 「それは…多分…まだ」 かな? 「じゃぁ、まだダメじゃない」 蛍はそう言い切った。 「理由があって別れた二人が、なぜもう一度心を揺さぶるようなことになるのか…。それはどちらかが、仕舞っていた気持ちに触れたからだ」 それは…弘美ちゃんが慶太の気持ちに触れたから? 「触れた方は、一縷の望みをかけて覚悟を持って触れたはずだ。それに、彼は揺さぶられた。だったら…響も彼の気持ちにもう一度触れたらいい」 「慶太の気持ち…」 「絆なんて、築こうと意識して出来るものでもない。気付いたらあるものだよ。響なら、彼との絆を築けてるはずだ」 蛍は優しい眼差しでそう言ってくれた。 「諦めたら終わりだ。彼が好きなら頑張れ。手離して後悔するな」 蛍の言葉が、胸を打つ。 何だか心が震える。 泣きそうになる。 「…説得力ないよ。蛍は佳世子と結ばれなかったじゃない」 誤魔化して、酷いことを口走ってしまった。 それでも蛍は笑ってくれた。 「確かに」 蛍は笑いながら溜め息を漏らした。 「でも、俺はー相手の心に触れようとしなかった」 蛍の横顔が寂しそうに見えた。 「酷いこと言ったね…ごめん」 「いや、事実だから」 二人で顔を見合わせて、眉を下げて笑った。 「頑張れ、響…」 蛍が応援してくれた。
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