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返信はせずに、化粧室を出た。
慶太が待っていた。
「大丈夫か?」
少し遅かったからか、慶太が心配してくれた。
私は大丈夫だと頷く。
「パスタよりうどんの方がいいか?」
「違うよ、大丈夫」
笑って答えた。
会社近くのイタリアンのお店に入って、パスタランチをそれぞれオーダーする。
お互いにトマトソースを選んだ。
窓際の明るいカウンターの並び席。
すぐに前菜サラダが運ばれてきた。
「食いながら話そうか。俺も話があるねん」
慶太はそう言いながら、カトラリーケースからフォークを出して、私に渡してくれた。
「先に話聞くわ」
そう言われた。
固まってしまう。
「どうした?」
問い掛けられて、何かを話さなきゃと、焦る。
「あっ、今建設中の商業ゾーンと住まいゾーンを繋ぐ道路の着工具合なんだけど…あれって、予定通りなのかな?」
「予定通りやろ。遅れは聞いてへんで」
「そう…なら良かった」
そう言ってフォークで生ハムをさす。
「それがどないしたん?」
「いや…遅れたら困るから、慶太知ってるかなって思って」
「そんなん担当に聞いたらすぐわかるやん」
「そ、そうなんだけど…」
「まぁ確かに、向こうのチーフ、話しかけ辛い雰囲気やけどな」
何とか話を繋げられた。
「話ってそれか?」
そう聞かれて頷く。
「なんや、仕事のことやったんか」
彼を横目で見ると、少しホッとしたような表情を見せた。
少しの間、話さずに彼は黙々と食べて、お皿が空になると、こちらを見た。
「食わへんの?」
生ハムが刺さったまま、食べていない私に慶太が問い掛ける。
「食べるよ」
そう言って生ハムを口にした。
「美味しい」
そう感想を言うと、彼は優しく微笑んだ。
「食いながら、俺の話、聞いてくれる?」
「うん…」
お皿に目を落とす。
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