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Ⅲ
何にもしたくない。バルムにさえ行きたくない。そんな日もある。
くたくたになって、ベッドに潜り込むのが精一杯なやるせない日々を過ごす。
やっと仕事が一段落した。久しぶりに癒されたい。
バルムに入ったとき、違和感を感じた。
それが何かはわからなかった。
リリィは相変わらずかわいいし、部屋に風は吹く。
なんだろう
考え込んでいる様子をリリィが不思議な顔でみつめていた。
「セイヤ、どうかした?」
「この部屋、変わったことなかったかい?」
「え~、何にもないわよ。何かあったら私、住めないもの」
確かにリリィはそうだよな。
まあ、いい。
気のせいだ。きっと疲れているせいだろう。
「リリィ今日は早く寝るよ」
「わかったわ。おやすみなさい、セイ…」
ジジッ
リリィがざらざらした画像になって揺らめいた。
「リリィ?」
「セイヤ、なんか手が透けて見えるよ」
ブッッ
いきなり電気が消えて真っ暗になった。
「リリィ!」
停電だ。
この界隈じゃ当たり前のことだ。
けれど今回はこのバルムの部屋だけらしい。
故障か。
とりあえず管理会社に連絡する。
いつ修理に来るかわからないけどな。
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