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Ⅴ
「何で?」
修理屋が怪訝な顔で立ち尽くす。
「おいおい、何でって聞きたいのはこっちだぞ」
修理屋はなんともいえない顔のまま俺に告げた。
「…お客様、申し訳ございませんが、しばらくバルムのご利用を我慢していただくか、他の部屋への移動を願うかしかございません。」
深々とお辞儀をされたが、納得がいかない。
「あの花はなんなのだ」
「こちらでも原因不明の現象でして」真顔でにこりともしない。
「あの壁ごと張り替えるしか方法がございません。その工事期間、我慢していただけるならば、改めて工事の手配をいたします」
このバージョンの部屋なんてなかなかないんだぞ。
「俺はリリィが…!」
「この部屋が気に入ってんだ!とっとと工事の手配しろよ」
修理屋はニヤリとした後、あわてて申し訳なさそうに言う。
「恐れ入ります。工事にあたって、バーチャルのリニューアルしなくてはなりません。キャラクター設定など変わりますがそれでも?」
キャラクターが変わる?
変わる?
リリィがいなくなるのか。
「このバージョンの、部屋を紹介しろ!なら許してやる」
修理屋は残念そうに答えた。
「恐れ入ります。このバージョンは廃止の方向ですので、もし見つかったとしてもわずかなあいだとなります。同じ現象がバルムを使い始めてからトータル3年未満で起こっているものですから」
俺が住む前、長いこと女性が借りていたらしい。俺が住み始めてからは確かに3年位たってはいる。おかしいじゃないか!
なんで3年なんだ!
もうリリィに会えないのか?
なんで花が!
花が…
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