降る雪のように

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 自分の体を温めるためにココアを入れていると、来客を知らせるドアベルが音を立てた。同時に冷たい空気が店内に流れ込む。 「いらっしゃい。お好きな席にどうぞ」  入ってきたのは女性だった。  不意に柳田の視線はその顔に引き寄せられた。  透き通るような白い肌と細面の整った顔立ち。確かに見惚れるほどの美人ではあるが、柳田が彼女の顔を見つめたのには別の理由があった。  彼女を知っているような気がしたのだ。 「コーヒーを……」  水とお絞りをテーブルに置く柳田に、女性はそう注文した。伝票に書き付け、一礼してからカウンターに引き返し、コーヒーを入れる支度をする。    出来上がったコーヒーをテーブルに置くと、女性はゆっくりと味わうように飲み始めた。  カウンター裏に戻った柳田は、その間中ちらちらと彼女の顔を盗み見ては記憶を探っていたが、結局思い出せなかった。  女性はたっぷりと時間をかけてコーヒーを飲み、終わると店を出て行った。  結局この日、柳田の記憶の扉が開く事は無かった。
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