2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
神崎さんとの記憶が薄れて、更に年月は流れて…。
今日は定期検診の日で、新しい『ハム子』を処方してもらう事になっていた。
もう何代目の『ハム子』になるか分からない。
『ハム子』は僕と四六時中一緒にいるので、他のハムスターよりストレスが多く、寿命が短い。その寿命が近づくと、新しい『ハム子』と交代して、今までの『ハム子』は、残り命を鳴神先生の元で、ストレスなく自由に過ごす。
「『ハム子』今までありがとう。あとはゆっくり自由に生きて。そして、新しい『ハム子』よろしくな」
これも、もう幾度となく繰り返される儀式。
僕は診察を終えて、新しい『ハム子』と診察室の外に出た。
外に出ると、白衣を着た1人の女性が立っていて、僕の姿を見ると、嬉しそうに笑顔を見せた。
「ぬくもり君!やっと会えた!」
その懐かしい呼び名に、色褪せた記憶が猛スピードで色づいていった。
「か、神崎さん?!」
「ぬくもり君、私ね、やっとここまで来たよ!あなたの病気の治療法見つけるために」
神崎さんが、僕に抱きついて来るような勢いだったのと、周りにチラチラと見られたので、僕は彼女の手を引いて、一旦病院の外に出た。
掴んだ神崎さんの手は、あの日と変わらずに、優しいぬくもりを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!