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目覚めると、そこはいつもの病院の病室だった。 生きている。 僕が少し上体を起こしてみると、胸の辺りに専用のポーチに入った、新しい『ハム子』、そして傍らには、僕の手をしっかりと握りしめる神崎さんの姿。 少し手を動かしてみても、しっかり握られて離れない神崎さんの手は、どうしようもないくらい温かくて、僕の目から自然と涙が流れた。 「…ぬくもり君?目が覚めたんだ!良かったぁ」 神崎さんは、叫んでから、すぐに僕が泣いていることに気がついた。 「ごめんね、ぬくもり君。私、あなたを助けたくて研究をしてたのに、研究に没頭して、あなたのことほったらかしにしてしまった」 「そんな事はない。神崎さんは僕の為に一生懸命やってくれてた!」 僕がそう言っても、神崎さんは静かに首を振った。 「私ね、決めた。もう研究はやめる。これからは、ぬくもり君の側にいて、あなたのぬくもりになる。それが一番、あなたの命を救える。そう気づいたの」 神崎さんは、僕の体をそっと抱きしめた。 小学生のあの時のように。 「小学生だった、あの時から、ずっとぬくもり君が好きでした。これからも、私と一緒に生きて欲しい」 本当は男の僕が言うべき言葉を、神崎さんはサラリと言ってしまう。やっぱり、あの頃と変わらず、神崎さんは僕のヒーロー的な存在なのかもしれない。 僕は 「僕の方こそお願いします。僕と一緒に生きて下さい」 そう言って、神崎さんをそっと抱きしめた。 告白も、プロポーズも、遅すぎる程遅すぎたけど、僕らは遅めの春を迎えた。
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