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僕が生まれた時、家族はとても大変な思いをしたらしい。 おんぎゃーと、元気よく生まれたものの、その5分後には、体温が下がり出し、顔も青ざめて、呼吸も弱くなってしまったから。 検査をしても、どこも悪いところは見つからない。 みんながどこか諦めモードに入ったその時、たまたまその病院にいたのが、僕が、その先ずっとお世話になる鳴神(なるかみ)先生で。 「この子、ぬくもり欠乏症候群ですよ!誰か、この子の手を握るなり、体を抱き締めるなりして!早くしないと、手遅れになる!」 もちろん、その場にいた誰もが、先生の言っている事が、理解出来ていなかったけれど、母はすぐさま、僕を抱き締めた。 すると、呼吸は元に戻り、顔色も赤みをさし、体温も上がり、少し前に起こっていた事が、まるで嘘のように、僕は穏やかな表情で眠った。 そんな話を、物心ついてから、もう何度も何度も聞かされた。
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